新型コロナウイルス COVID-19の流行によっておいそれとドイツに帰れなくなってしまった、と書こうとしてふと疑問に思ったこと。
ドイツ語には全ての名詞に文法上の性がある。
学習しはじめのうちはどうしてHose -ズボンが女性名詞でRock -スカートが男性名詞なのかと頭を悩ませたりしたものだ。
通っていたドイツ語学校の女性の先生は
「Arbeit -仕事は女性名詞でUrlaub-休暇が男性名詞なのは納得いかないわ!」
などと言っていた。
Junge -少年がeで終わるにも関わらず男性名詞とされているのに、Mädchen -少女がchenで終わるため中性名詞とされているのも違和感がある。
a,eで終わると女性、動詞の名詞化したものは中性、アルコールは男性…しかしビールは中性というビールを水の如く飲むドイツ人の国民性が窺える例外などもありつつ、ある程度は規則に沿ったものだが、時代の潮流とともに新たな言葉が出てくるとしばしばドイツ語ネイティブ同士でも議論が白熱する。
外来語も同様で、ラテン語やフランス語など元々性がある言語由来のものは言語の性を引き継ぐことが多い。
たとえばイタリアからの借用語 Grappa -グラッパ、アルコールという分類なのでドイツ語では男性とされているのだが、ドイツ語の正書法辞典Dudenによると元のイタリア語に準拠した女性でも良いようだ。
Duden | Grappa | Rechtschreibung, Bedeutung, Definition, Herkunft
さて、Virusの性に関して男性なのか中性なのかは議論されている。
上記記事によると、Virusの語源を遡ればラテン語で中性であることと、外来語にはひとまず中性を当てることなどから長く使われ好まれているのは中性だと解説している。
科学的記事で用いられる際も中性。
ただ、"der Luxus"- 贅沢 "der Egoismus" -利己主義 など、"us"で終わる名詞には男性が多い。
Universität Erfurt-エルフルト大学の言語学者 Elke Galgon曰く、言語は流動的なものなのでVirusを男性名詞とするのもまた正しい、と。
日本語でも慣用句などが誤用からだんだんと本来の意味を変えるように、ドイツ語の名詞の性も変わることがあるのかもしれない。
実際にはVirusは男性・中性同じくらいの頻度で呼ばれているようだ。
ただ、不思議とコンピューターウイルスに関しては男性名詞として扱われる傾向にあるらしい。
学術的には中性として表現するようなので、一般的な病原体としてのウイルスは中性として扱っていきたいと思うのであった。
蛇足ながら、ドイツ語のVirusの発音はヴィールス。
本来ドイツ語ではvを英語のfに近い音で発音するのだが、外来語であるが故か例外的な発音となっている。