【Live Report】Oomph! R・I・T・U・A・L TOUR 2019

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NDH (Neue Deutsche Härte)と呼ばれるドイツの音楽ジャンルにおける先駆者的バンド Oomph!のドイツ国内およびヨーロッパツアーが3月に行われた。

 Oomph! / R・I・T・U・A・L

今年1月に発売されドイツ国内チャートでめでたく1位となったアルバムRITUALを引っさげての今ツアー、縁あって3/8 Stuttgart公演の撮影に入らせていただいたので、その写真を交えてライブレポートをお送りしたい。

 

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ぼんやりと青い照明に照らされる中メンバーが順に登場、早速新曲TRRR - FCKN - HTLRから勢いよくスタート。

 

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激しいイントロに合わせてステージの上をぐるぐると徘徊するボーカルDeroはまるで何かに取り憑かれたような気迫がある。

 

間髪入れずに映画ボヘミアンラプソディが大ヒット中のQUEEN „We will rock you“のドラムのリズムで手拍子を促し、コーラスの掛け合いで少し観客のテンションをあげてから流れるようにLabyrinthへ。

代表的な曲であるだけにサビの “links rechts geradeaus“ - 左・右・まっすぐに というフレーズは会場全体から声があがる。

 

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続いてのTräumst du ではSpring! -飛べ! との掛け声でメンバーも客席も一斉に飛び跳ね一体に。

 

„Dieses Lied wurde wirklich extra für euch geschrieben. Nur euretwegen können wir seit fast 30 Jahren unseren Traumleben, Danke!“ - この曲は特に君たちのために書いた曲なんだ。君たちのおかげで約30年間夢のような生活ができていることを感謝する。

と言って始まったのはJetzt oder nie、場内は拳を振り上げ熱狂に包まれた。

 

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一息ついてギターのCrapとFluxはキーボードにパートチェンジ

 

„Was richtig altes. Älter als wir sind...? Nein, Das geht´s nicht. “ - ここで古い曲を…僕たちよりも古い?いやいや、それはありえないね。

と冗談を交えつつ 

„Wir haben den Song selber geschrieben. Wer kennt unserer erstes Album ? “ - 僕たちは自分たちで曲を書いているんだけれど…僕たちの初めてのアルバムは知ってる?

 と問いかけてから歌い出したのはDer neue Gott

 

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„Ich bin der neue Gott“ - 我は新たな神である 

と何度も繰り返すテクノ色の強い初期の楽曲だ。

 

„Es gibt noch älter, hier ist das aller erstes Stück jemals für Oomph!. Es war der Ende der 80er Jahren...Wer war der Ende der 80er Jahren schon geboren?“ - さらに古い曲…Oomph!で初めて書かれた曲を。80年代の終わり頃の…80年代の終わりにもう生まれていた人は? 

としばし観客とのコミュニケーションをとってから、幅広い世代が一堂に会することはとても素晴らしいことだ、と言ってMein Herzへ。

場内を見渡すと、なるほど老若男女幅広く支持されていることがよくわかる。

 

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ボーカルと共にドラムも担当するDeroはライブではフロアタムを2つ並べて要所要所で叩いているのだが、この初期2曲での規則正しいドラミングはまるで宗教的儀式のよう。

続くDas weisse Lichtのイントロが始まるとDeroは一度袖にはけ水を両手に再登場、場内に勢いよく水を撒くと歓声があがった。

 

そして

„Für das nächste Lied braucht Eure Unterstützung, Ich hoffe ein einfachmal, dass wir uns einig sind, bei dem einen Satz den wir jetzt gleich zusammen  singen. ganz einfach, aber sehr wichtig ... 【Nie wieder Krieg!】“ - 次の曲ではみんなの手助けが欲しい。曲のワンフレーズを一緒に歌ってくれたら、と。とても簡単だけれど重要なこと…【戦争を繰り返さない!】

と新たなアルバムから一曲、Tausend Mann und ein Befehlを。

 

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戦争をテーマにした曲なだけあってイントロのドラムやギターの音はまるで銃声。

 

そしてライブ中盤、壮大な広がりを感じる曲niemandでは曲の終わりに毎回Deroが客席へとダイブするのが恒例。

ステージに戻ったDeroは観客とのコールアンドレスポンスののち、

„Willst du euch lieben ?  Trotzdem... ist der jetzt...ganz ganz stark sein... Dies ist kein Liebeslied!“ - 愛し合いたい…?でもね、これはラブソングじゃない!

といってアルバム発売に先駆けてリリックビデオを公開していた楽曲 Kein Liebesliedへ。

 

これまた冒頭のTRRR - FCKN - HTLRと同様にDeroが勢いよくステージの上をグルグルと歩き回る激しい楽曲で迫力がある。

 

„Euch trotzdem lieb. Nach diesem Lied kann eigentlich nur ein Liebeslied komm, oder? Schenkt mir ein Licht, Handy, Feuerzeuge, irgendwas.“ - まさかね、君たちのことはもちろん愛しているよ。こんな歌の後には当然ラブソングを演奏しなくちゃね? 携帯、ライター、なんでも良いから光をつけて

 とフォローも入れつつ、続いてはバラードのAuf Kursに。

客席各々が一斉に光を揺らし、場内は幻想的な雰囲気となった。

 

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そしてキーボードのFelix以外が一度はけ、歌詞をなぞるように指を喉の奥に入れる仕草からFieber〜Das letzte Streichholzのバラードアレンジメドレーに。

この2曲、全く異なる楽曲にも関わらず自然に融合しており、FelixのキーボードとDeroのドラムのみというシンプルなアレンジがとてもよく響いた。

そして再びメンバーが揃い、ミドルテンポでカラフルな印象のGott ist ein Popstarから切りつけるような怪しげな音色で激しく彩られるGekreuzigt、さらには激しく切ないバラードであるAlles aus Liebeへと目まぐるしく展開していく。

 

一呼吸置いて始まったのはこれまた新たなアルバムからMVにもなっているIm Namen des Vaters

 

ライブもいよいよ終盤にさしかかりバラード Jede Reise hat ein Ende - 全ての旅には終わりがある が演奏されると得も言われぬ感情が押し寄せてくる。

しかしそんな感傷的になったところを吹き飛ばすかのように、続くKleinstadtboyではショッキングピンクの照明に照らされたメンバー全員がいたずらっ子のような表情を見せる。

80年代に活躍したシンセポップの先駆け的グループ Bronski Beatのヒット曲であるSmalltown Boy を、Oomph!が現代風にアレンジした一曲だ。

 

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そしていよいよライブも大詰め、ドラムに合わせた手拍子からベースが重なりはじまったSandmannで一挙に盛り上げ、続く本編ラストOomph!一番のヒット曲 Augen aufで場内の盛り上がりは最高潮に達した。

 

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アンコールでは不穏なキーボードの不協和音からMein Schatz、そして最後は重厚なバラードであるAls wärs das letzte Malで締めくくった。

 

Der Mond geht auf, ich bin bereit
Bereit von dir zu scheiden
Es spannt sich zwischen uns ein Band
Wir müssen es zerschneiden
In deiner Nähe bin ich einsam
Denn du bist zum sterben schön
In Liebe lassen wir uns fallen,
Mit dir will ich heut' Nacht vergeh'n.

 

月は登り準備はできた

あなたと別れる準備が

私たちの間には絆がある

その絆を切り離さなければならない

あなたのそばで私は孤独である

なぜならあなたがきれいに死にゆくから

私たちは恋に落ちた

私はあなたとこの夜を過ごしたい

 

と、ライブの終わりにふさわしい物悲しくも美しい死に別れの歌詞である。

近年のOomph!は叙情的な詩表現が多くそれが大きな魅力の一つであり、ライブにおける物語性を高めているように感じる。

 

新旧の楽曲を織り交ぜ緩急のあるバランスの良いセットリストは、さすがキャリアのなせる技。

そして1ヶ月でドイツ国内11箇所とヨーロッパ11箇所の計22箇所を回るという過密なスケジュールながら、毎回2時間にも及ぶ激しいライブを質を落とさずに続ける剛健さにも驚嘆した。

結成30周年となる彼らだが、まだまだ今後の活躍に期待したい。

 

Oomph!

Vo./ Dr. Dero Goi
G. / Key. / BGV.  Andreas Crap
G. / Key. / Sampling / BGV. Robert Flux

 

Support
Ba. / BGV.  Hagen

Key. / BGV.  Felix

Dr. Silvestri

http://oomph.de

 

-set list-

 

1. TRRR - FCKN - HTLR

2. Labyrinth

3. Träumst Du

4. Jetzt oder nie

5. Der neue Gott

6. Mein Herz

7. Das weisse Licht (Lange version)

8. Tausend Mann und ein Befehl

9. Niemand

10. Kein Liebeslied

11. Auf Kurs

12. Fieber - Das letzte Streichholz (MEDLEY)

13. Gott ist ein Popstar

14. Gekreuzigt

15. Alles aus Liebe

16. Im Namen des Vaters

17. Jede Reise hat ein Ende

18. Kleinstadtboy

19. Sandmann

20. Augen auf!

Encore:

21. Mein Schatz

22. Als wärs das letzte Mal