露語事始

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икра́ минта́й イクラ ミンタイ スケトウダラの卵 つまりたらこのこと

先月末からロシア語学習を始めた。
語学学習がとりわけ好きというわけではないのだけれど、はじめたては自己効力感を高めてくれるように思うので人生の脱線…という感じ。
 
わたしの語学力は
・日本語 母語
・ドイツ語 上級(CEFR C1)
・英語 中学レベルでも怪しい
 
英語を完璧なものにしたほうが良いのではという客観的な意見もあるのだけれど、英語にはとんでもなく苦手意識があるし、英語が出来る人は周りに多いのでいよいよ必要な時にはアウトソーシングすれば良いか、と思っている。
 
また英語は義務教育でしか触れていないけれど、ドイツ語を始めてから上達したと言われた。
近似の言語を学ぶことで知らず知らずのうちに英語力が底上げされているらしい。
とはいえ苦手意識は根深く上達している自覚はあまりない。
 
余談ではあるがわたしは捻くれ者なので、英語を習得した人がグローバリゼーションを声高に主張していると、全ての国が英語圏というわけではないし、思ったより万能な言語ではないですよと水を差したくなる。
もちろん、世界的に通じやすい言語であるとは思うし義務教育レベルですら危うい私の拙い英語でも助けとなったことはある。
 
少し話が逸れた。
 
さて、予てより簡単には読めない(ローマ字ではない)言語を習得してみたいという思いがあったので、ロシア語・タイ語・アラビア語あたりかなと思っていた。
簡単には読めないと言うのは、暗号感があって心が躍るという厨二病的発想である。
石川啄木だって当時は文化人にしか読めなかったローマ字で花街通いについてなぞ記していたのだ。*啄木・ローマ字日記 (岩波文庫 緑 54-4)


実用的という意味では中国語も習得したいと常々思っているけれど、なんとなく漢字で意味が取れてしまえるように思えるのと同時に多量の漢字に抵抗があるのでこちらは後回し。
タイ語は一時期マッサージ屋さんのタイ人と仲良くなったこともあり習得を試みたけれど、文字があまりにも馴染まず始めるには至らなかった。
アラビア語は文字がとんでもないのも去ることながら現時点では文化的に強い興味があるものがないかな、と。
そこで文化的に元々興味があり、ローマ字に似て読めそうで読めないロシア語になった。
なんといってもわたしの一番好きな映画は惑星ソラリス(Солярис)、ロシア映画なのだ。
ボルシチ бо́рщ・ペリメニ пельмениといったロシア料理も大好きで、ロシアスーパーに行くたびこの暗号が解読できたらな…と思っていた。
あと歴史的に秘密の多い国でもあるので、一次情報を得ることでそのあたりも理解が深まるかな、とも思ったり。
 
さて、わたしは言語を覚えるときに文字情報として頭に入れる癖があるのだけれど、これは言語習得には向かない傾向だと思う。
文字からの言語習得は発音と表記に乖離があると非常に混乱する。
たとえば英語のknowのkを読まない、と言ったいわゆる黙字。
フランス語はそんな読み方する?!の連発であることはわかりきっているので手を出さずにきたけれど、まさかロシア語もそうだとは…ударе́ние(ウダレーニエ)という一部を伸ばすアクセントをはじめ、оは場合によりaと読むことがあったり…キリル文字が一通りわかるようになっても一筋縄ではいかない。
日本語も漢字の当て字とか多少は特殊な発音のものはあるけれど、基本的にひらがなは一文字一音だし、ドイツ語も変則的な読みをするものはそうないように思う。
世界的には発音と表記に乖離があるほうが多いのだろうか。
 
読み書きができなくても言葉は話せるようになるはずとは思うものの、読み書きなしでの言語習得がなかなか想像できない。
日本人は読み書きは得意なので言語テストの点は良いけれど喋るのが苦手で、それとは反対にヨーロッパ系の人は言語を耳で覚えるので流暢に喋っているように見えるけれどテストはできない、というようなことは一般的によく言われる。
日本人のわたしは例に漏れず未だにドイツ語を話すのは苦手。
それとは逆に、ドイツでやり取りをしているとたまにボイスメモを送ってくる人がいるのは、書くことが困難だからなのか、と実感することも。
日本でボイスメモを送るような場面は恋人同士などよほど親密な仲でないと想像し難い。
 
この違いは脳の癖から生じるのではないかとなんとなく思っている。
日本人は初めての言語習得が漢字の書き取り練習など否が応にも読み書きに密着したものとなるので、読み書き優先型の発達をしやすいのかもしれない、と。
 
完全に趣味なのでゆるりとやれば良いか、とも思うけれどそうするといつまで経っても習得できなさそう、と思っていた矢先にロシアに行く話が持ち上がった。
格変化が6つもあるとわかって慄いているけれど、どうなることやら。
とりあえず旅行で困らない程度に扱えるようになりたい。
昨日少し知っている単語を友人に披露して自覚したのは見事に食べることに関する言葉ばかり覚えているということ。人は欲望に忠実である。
しかし欲望よりも大事なのは身の安全。
先日訪れたオランダ ユトレヒトで銃撃があったと知り、最低限現地の言葉で 危ない 逃げろ 助けて などの緊急時の単語は把握しておくべきだとしみじみ思った。
数字に関する言葉も把握しておくべきと思うもののこれがなかなか難しい。
日本語は1-9が固有の呼び名、続いては大きいくらいから順に読んでいくだけなので最も単純だと思う。
英語の数字は1-12が固有の呼び名、後は10の位、1の位の順で例外がないのでこれも比較的覚えやすい。
ドイツ語は12までは英語と同じく固有の呼び名だが、2桁の数字はなぜか1の位から読む(例えば21は Einundzwanzig 分解すると ein und zwanzig で1と20という言い方)
あと大きな数は英語だと Million(10^6) Billion (10^9) Trillion (10^12)と続くが、ドイツ語ではなぜかMillionとBillionの間にMilliardeというものが存在するので、 Million(10^6) Milliarde(10^9) Billion (10^12) 続いてこれまたBilliarde(10^15) となりかなり英語とはズレがある。
そうそう大きい数字は日常では使わないけれど、ふと必要になったときしばらく考え込んでしまう。
フランス語の数字はとても複雑とよく聞く。それもまたフランス語を始める気がしない一要因である。
 
そんなこんなでまだキリル文字を読むのもたどたどしい段階なので、とりあえずは原始的に音だけでとにかく単語を覚えようとしている。
しかし単語が長くゲルマン語派との類似性も乏しいので色の名前ですらすんなりとはいかない。どこまでやれるだろうか。