店先で普段よりカラフルなKrapfen (クラプフェン) を見かけることが増えると、そろそろFasching (ファッシング) だなと身構える。
Faschingはいわゆるカーニバル。有名なリオのカーニバルなどと興りはおなじもの。
なんとなく2月というイメージを持っているけれど、今年は随分遅くて今日2/28から。
春分の日の次の満月の後の日曜日からキリストの復活祭であるイースターを決め、そこから逆算して…とややこしい移動祭日ではあるが、今時は数年分ネットで参照できる。
平たく言えばキリスト復活祭までしばらく断食期間となるので、その前に美味しいものを食べておこう、というカトリックのお祭り。厳密には11月からシーズンは始まっている。
1週間ほど続くFaschingには特別な名前がついている日もあり、行事も様々。
ミュンヘンのFaschingの予定はmünchen.deで確認できる。
初日である今日はUnsinnigen Donnerstag 無意味な木曜日。一般的にはWeiberfasching 女性のFaschingとも呼ばれる日で女性が街中の男性のネクタイをハサミで切る、という不思議な慣習がある。
気になったので調べたらAugsburger Allgemeineでこんな記事を見つけた。
民俗学者Alois Döring曰く、19世紀のBeuelというボンの地区で洗濯婦は1日16時間も働くのに対して男性の仕事はその綺麗な洗濯物をケルンに運ぶだけ。それにうんざりした女性たちが年に一度だけ、その不満を表明しているのだとか。
男性の力の象徴であるネクタイを切ることで上下関係を解消するという意味合いがあるらしい。
しかし伝統的な風習と言えども法的には物的損傷だから気をつけてね、と規則にうるさいドイツ人らしい言葉で結ばれている。
ちなみにボンのあるラインラント地域では非公式ながら休日となっており多くの場所では午後仕事が休みになるとか。
ドイツは州によって祝祭日が異なる上、 学校の休みなどは州によってずらしているので同じ国内でも休日事情はかなり異なる。
いわゆるカーニバルらしくなるのはミュンヘンでは日曜から火曜にかけて。
街は仮装した人でいっぱいになる。
ハロウィンシーズンもデパートなどではそれなりに仮装グッズを取り扱っているが、今の時期はそれとは比べ物にならないぐらい大きい仮装グッズコーナーが特設される。
月曜はRosenmontag 薔薇の月曜日と呼ばれるが、このRosenには諸説あるらしく、グリム兄弟のドイツ語辞書を参考にした解釈ではMittelhochdeutsch(中高ドイツ語=少し古いドイツ語)のRasenmontagに由来しており、このrasenとはケルンの方言でrose 標準語ではtollen はしゃいで歩き回るという動詞からということになっている。
これとは別で薔薇に関する逸話もあるらしいが、rasenの説の方が騒いで練り歩くFaschingには適切なように思う。
このRosenmontagがFaschingのピークとなる地域もあるようだが、ミュンヘンでは続く最終日Faschingsdienstag Faschingの火曜日が一番のピーク。
これがまあ、とーっても騒がしい!
Viktualienmarktには小ステージまで作られて人がみっちりとひしめき合い歌ったり踊ったり朝から晩までどんちゃん騒ぎ。引っ越す前はViktualienmarktに家が隣接していたので辟易していた。
ミュンヘンで身動きも取れないほど一箇所に人が集まるのはサッカーの試合がある日以外にはとても珍しい。
この火曜はやはり公的には祝日ではないのだが、ミュンヘンでは午後には多くが店仕舞い。munchen.deではいくつかの店舗の閉店時間を例示している。
仮装した人たちは色とりどりの紙吹雪をそこここに散らすのだけれど、不思議と次の週にはまったく見かけないほど綺麗になる。
思えば冬場の雪対策で方々に撒かれる砂利も夏にはその存在を忘れるほど姿を消すのはなかなかの驚きで、AWM(ミュンヘン清掃局)の清掃活動に対する腐心が感じられる。
そんなこんなでどんちゃん騒いだ後、Aschermittwoch 灰の水曜日から復活の日までは断食期間となる。
断食に備えて高カロリーのものを摂取しよう、と冒頭に載せたKrapfenを食べるのだ。
英語圏ではPancake Dayとして灰の水曜日の前日に食べる習慣があるようだけれど、ドイツでは特に決まった日はなく漫然と食べている気がする。
ちなみにKrapfenと呼ぶのは南部だけで、北部ではBerliner Pfannkuchen (ベルリーナープファンクーヒェン) と呼ばれる。
この呼び名事情がなかなか面妖で面白い。
Pfannkuchenは南部ではパンケーキやクレープのことを指す。
では北部ではパンケーキのことをなんと呼ぶか?
答えはEierkuchen(卵のケーキ)
Krapfen自体は通年販売していて、大晦日にも食べる習慣があるらしい。揚げパンやドーナツに似たおやつで、中にはジャムやクリームが入っている。
普段は粉砂糖をまぶしたシンプルなものなので、この時期の色とりどりで毒々しいものとはだいぶ印象が違う。
ビール!ソーセージ!と言われがちなドイツだけれど、Krapfenもなかなかの名物ですよ。